食いしんぼうカメラマンAkiのブログ

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NHK朝ドラ「べっぴんさん」の良かったところと悪かったところ

NHK朝の連続テレビ小説「べっぴんさん」の最終回が4月1日に放送されました。神戸を舞台としたテレビドラマということで毎日放送を楽しませてもらいました。べっぴんさん全体を通じた感想について書きます。ストーリーのここが良かった、あの人の演技が素晴らしい、モデルになった人たち、神戸のあのシーンにニヤリ、といった感じの内容です。一方で残念だったところもあるので少し触れます。

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画像はNHK連続テレビ小説「べっぴんさん」 (@nhk_beppin.san) • Instagram photos and videosより引用

良かったところ

モデルが良い

このドラマを楽しみに見ていた大きな理由がそのモデルにあります。芳根京子さん演じる「すみれ」のモデルはベビー用品メーカー「ファミリア」の創設者・坂野敦子さんです。戦後まもない頃にそれまで何の仕事の経験もなかった女性が自らの生活のために始めたビジネス。それがやがて日本を代表する企業に育ちます。事実は小説よりも奇なり、という言葉もありますが、坂野さんの一生はまさにドラマに描くには最高の素材です。彼女の一生やファミリアの歴史については様々な書籍が出ていておすすめです。

上記の本が特におすすめですが、文庫サイズで読みたい人には次の本もおすすめです。

坂野惇子 子ども服にこめた「愛」と「希望」 (中経の文庫)

坂野惇子 子ども服にこめた「愛」と「希望」 (中経の文庫)

 

こちらの本は書評も書きました。

【神戸本紹介】NHK朝ドラ「べっぴんさん」のモデルの一生が分かる「坂野惇子 子ども服にこめた『愛』と『希望』」 | Akiの神戸ファインダー

魅力的な登場人物がたくさん

モデルが良いこともあってドラマの登場人物には魅力的な人がたくさん出てきます。また単純に実在の人物をなぞるだけでなくフィクションとしてうまくキャラクターを作っていると感じました。

例えば明美さん。モデルは看護師の大ヶ瀬久子さんでしょう。ベビーナースとして活躍されファミリアにおいてもベビーコンサルタントとして尽力された人物です。ただし大ヶ瀬さんは本来創業者の4人の女性の中には入っていません。ドラマでキアリスの創業者の一人に入っていることや、若い頃のすみれとの軋轢などはドラマのオリジナルストーリーです。単なる赤ちゃんのお世話に関する専門家としてではなく、非常に個性あるキャラクターとして描いたのは素晴らしかったです。すみれさんとの対立はヒロインのお嬢様気質を描くうえでもとても効果的でしたし、創業者の中にひとり子どもを持たない女性を入れたのも様々な価値観を表現しており良かったと思います。

あとは悦子様も面白いキャラクターでしたね。女学生時代の友人がデパートで接客業務を行うというエピソードはファミリアでも実際にあった話です。たたずまいや仕草は一朝一夕でつくれるものではないので、良家で育った女性たちが行う接客はとても品があって好評だったそうです。しかし、ドラマではこういった話にとどまらず、ファッションショーに登場したり、戦後に再婚する女性として描かれるなど、存在感あるキャラクターでした。

キアリスとは異なる経営方針をもつ古門充信のダークな存在感も良かった。古門社長とそこにアドバイスを求め訪れる健ちゃんは、まるでシスの暗黒卿とアナキンを見ているようでした。

実力派の役者さんたち

NHKの朝ドラといえば、出演をきっかけに役者さんが売れっ子になるイメージがあります。べっぴんさんにおいても、大御所の役者さんだけでなく比較的若い役者さんたちの演技が良く今後の活躍に期待を持てました。

まず、ヒロイン・すみれ役を演じた芳根京子さん。若い頃の演技は特に素晴らしかったのではないでしょうか。これからの活躍に期待したいです。「なんか、なんかな」という口癖が大好き。商売を始めてまもないころ、商品の値段を決めていなくて父・五十八から顔をそむけたときの演技がいまでも印象に残っています。ものすごく良い顔でした。一方で後半はだんだんと感情移入できなくなりました。まだ20歳の彼女に朝ドラ特有の年をとった頃まで演技させる手法はつらかったように思いました。

ツイッターにも書いたのですが、紀夫さん役の永山絢斗さんの演技が特に好印象でした。

俳優・瑛太さんの弟さんだそうですね。才能ある兄弟で素晴らしいです。

ももクロ百田夏菜子さんの演技も良かった。1994年生まれの22歳らしいですが、もっと人生経験を積んだ人の演技に見えます。あの子育てに悩んでやつれたような演技や、年齢を経てからの自然な老け込んだ演技は様々な苦労を経た人間じゃないとできないのではと思ってしまいます。普段のアイドル活動のことはよく知らないのですが、ますますの活躍を期待しています。

松下優也さんや、高良健吾さんも良かった。めっちゃかっこいいね、この二人は。そして生瀬勝久さん、伊武雅刀さん、田中要次さんらが脇を固めており、俳優さんたちの活躍が実に素晴らしかったです。

神戸が舞台

異人館など神戸の景勝地がドラマにたくさん出てきました。神戸っ子としては地元企業のファミリアが取り上げられ、多くのロケ地に神戸が使われたことがとても嬉しかったです。戦前や戦後間もない神戸の風景はまったく見たことがないので、ドラマを通じて想像することができたことも良かったです。

ドラマを見ながら「ここ知ってる!」という喜びがあったり、ドラマを通じて初めて知った場所を実際に自分でも訪れてみたりととても楽しかった。このあたりは次の記事に詳しく書いています。

kobefinder.com

残念だったところ

中だるみのストーリー展開

タイトルにあるようにこのドラマのテーマは、心を込めたモノづくりやその優れたモノ「べっぴん」です。しかしドラマ中盤の学生時代の桜ちゃんをめぐる話はあまり「べっぴん」と関連しない話で面白くありませんでした。親が仕事に忙しくて子どもに構えない。反抗期で家出する。なんとも使い古されたストーリーのように感じました。それだけ普遍性があって共感をよべる話なのかもしれませんが、もう少しオリジナリティあるストーリーにできなかったのかと思います。

例えば良子ちゃんが幼い龍ちゃんの子育てに悩むシーンは非常によくできていたと思います。ひとりで悩まずにみんなで育てようという解決策も良かったし、君ちゃんのお母さんがはっきりと「龍ちゃんは悪い子じゃない」と言ってくれたのも良かった。仕事場であり、子育ての場でもあったキアリス。会社の根底に流れる「お母さんと赤ちゃんのためのお店」という信念ともつながる印象的なエピソードでした。

ジャズバー・ヨーソローの面々はフェードアウトしてしまって終盤は出てこないということもあって、なんとも残念でした。神戸らしい舞台で良いとは思うけれど、そのセットありきで組み立てられたストーリーのように感じました。もう少しヨーソロー関連で「べっぴん」に絡めてストーリー展開できなかったのかと思います。何よりあの家出騒動の話は見てて楽しくなかった。ちょっと長すぎたように感じました。

時代考証、設定の詰めが甘い

胃が悪いという描写があったばかりの人物に30年か40年くらい前の小豆でつくった赤飯のおにぎりをプレゼント。最終回で描かれたこのシーンについて多くの視聴者が疑問を感じました(参考:小豆 X べっぴんさん | HOTワード)。「それ食べて大丈夫なの?」というもっともなツッコミです。

たしかに小豆の話を回収するのは感動的で良いと思うのですが、もっと早くそのエピソードを作れなかったのだろうかと疑問に思います。仮に衛生的に問題なくても見てる側の人間が思わず心配してしまうようだとドラマに集中できません。細かい設定が甘いように感じます。

また、作中に何度も出てきた神戸の街を見下ろせる丘の風景。撮影は淡路島で行われ、風景を合成しているそうです(参考:神戸新聞NEXT|神戸|「べっぴんさん」最終回 ロケ地や特設展人気)。この丘から見える風景がドラマの年代と実際あるべき神戸の風景とうまくマッチしません。いちばんわかりやすいのがポートアイランドが映っていないということ。1966年(昭和41年)に着工が始まっているはずの島がドラマ終盤になっても一切見る影がないのは不自然です。ふつうドラマには時代考証などで専門家を雇っていると思うのですがNHKにしてはずさんな描写です。

ちなみにこの丘からの眺めには右手に風見鶏の館らしき建物が映っており、だいたい北野天満神社あたりからの風景に近いです。神社の梅林から建物などの遮蔽物がなければドラマと近い風景になると思います。

まとめ

長い歴史を持つNHKの朝ドラとしては「詰めの甘さ」があると感じました。公共放送のテレビ局がつくるドラマということで批判されても仕方ありません。受信料で制作するならちゃんとしてくれ!という要望はあってしかりだと思います。

一方で個人的にはとても満足度の高いドラマでした。ファミリア創業者をモデルに神戸を舞台としたお話であったことが個人的にとても関心を持てた要素でした。役者さんの演技も良かったし、脚本も概ね良かったと思います。朝ドラは傑作もあれば、まったく興味を持てない駄作も正直あります。このドラマは半年にわたって日常的に視聴させてもらえた良い番組でした。面白かったです。

 

以下べっぴんさん関連商品。小説やDVD、ブルーレイボックスなどが販売されているようですね。

NHK連続テレビ小説 べっぴんさん 上

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